安定のための安定には疑問がある。

やることが山積みで慌しくて、
脳ミソの中枢がジーンとするような日々を送っています。

万祝<まいわい>(1) (ヤンマガKCスペシャル)

万祝<まいわい>(1) (ヤンマガKCスペシャル)

そんななか、ひょんなことからどさっとお古をいただいて、
望月峯太郎『万祝』を一気読みしています。


主人公の女子高生フナコちゃんは、
気分が高揚すると自分で自分のおっぱいを揉んじゃうのですが、
その気持ちがひしひしと伝わってくるような、
胸が熱くなる海洋冒険譚です。


「海はまるで人生そのもののようだ
 波は止まることなく動いて海を作っているが
 動かなければ一枚の風景になってしまう」


しかしこれ全11巻なのですが、
いただいたの9巻までなのですね。
まあこの流れだと、10巻と11巻は絶対に買いますね。
そしたらいただいた人に貸してあげるという交換条件での譲渡だったのです。


ん?ってなんか、妙?合ってるよね?


凪いでいたわたしの海にも、風が吹いてきた気がします。

夏の魔物に会いたかった。


大人の夏休みが終わってしまいました。
ええ、3ヶ月近く無職でした。


職はいくつか変えてきたけれど、
前職の間に職を決めなかったことははじめてで、
1週間を超えて休むことも、社会人になってから初めてでした。


「せっかくなんだから旅に出なよ!」という進言がほとんどだったし、
わたしもさすがにどこかに行こうと思ってましたが、結局…


都内および近郊をうろうろして、過ぎていってしまった!
普段となんにも変わらないじゃないか!


でもなんか、すごく有意義だった気がする。
気がするだけかしら?
いや、でも、たぶん。


やったことを、まとめてみよう。


■アート
ハイメ・アジョン展@渋谷西武
岡本太郎展@渋谷パルコ
名和晃平展@東京都現代美術館
ミン・ウォン展@原美術館
フレンチウィンドウ展@森美術館
和田誠展@世田谷文学館
…ほか、ちっちゃなギャラリーもいくつか。


■映画・ドラマ
キッズ・オールライト
ブラック・スワン
100,000年後の安全
コクリコ坂から
『人生、ここにあり!』
…ほか、DVDでいっぱい。


…ほか、海外ドラマも全ドラマ合わせて4シーズン分くらい観る。
1シーズン24話として、96話?


■本
たくさん


■美味しいお店
たくさん


そして、とにかく飲みました。
しばらく会えなかった友達に何人か会いました。
いつも会ってる友達には何度も会いました。
一度しか会わないだろう人にも、たくさんたくさん会いました。


よく走り、よく自転車に乗りました。
料理・掃除・洗濯もしました。
チャリティーやボランティアに参加しました。
ライブもDJイベントも行きました。
祭りも行きました。
父と母と、祖母と兄家族にいつもより頻繁に会ってたので、
家族孝行にも、なったのかな。


結婚するわけでもないし、フリーになるわけでもないし、
ましてや病気なわけでもないし、
その齢で無職になって、一体どうするつもりなの?
と、口に出して出さないで、非難されることもあったし、
わたしも2割くらい、不安に思わないでもなかった。


でも8割は… 伸び伸び生活を楽しんでおりました。


決断をしていくと、つらいことや悔しいこと、
苦しいことだっていっぱいある。
選択したがゆえに、逆に手に入らなくなるものも、
いっぱいある。
ぼんやり流されて生きてるよりも、そりゃまあ数倍。
だからって喜びも倍になるかというと、
そうとも限らない。


でも、自分で決めたことであれば、
全てを引き受けるって覚悟ができるし、
隣りの芝生だってあんまり青々しくは見えない(たまに見えるけど)。
いつもそれだけが、生きる主軸。


そして、
人生を自分で考えて選んで決めて来られたことを、
そういうふうにわたしを守り育ててくれた家族がいることを、
自分を信じて見守ってくれる友達に恵まれていることを、
わたしはこのうえない幸福と思って感謝すべきなんだと、
いつも思う。


文句を言う余地はない。


とりあえず、また本の仕事をしています。
今回は海外にも行くようです。
まあ、3ヶ月後くらいに同じ仕事をしてるかどうかは、
わからないけれど。


人生は、予想がつかないからこそ、面白いんじゃあないかしら。

神童のなれの果て。

友達の息子(5歳)が、本を読むのが大好きだといいます。
「何の本が好きなの?」
と気軽な気持ちで訊いたら、
「あくたがわりゅうのすけの、とししゅん」
という答えが返ってきました。
面食らいました。

杜子春・くもの糸 (偕成社文庫3065)

杜子春・くもの糸 (偕成社文庫3065)

杜子春・トロッコ・魔術―芥川竜之介短編集 (講談社青い鳥文庫 (90‐1))

杜子春・トロッコ・魔術―芥川竜之介短編集 (講談社青い鳥文庫 (90‐1))

それは紛れもなく『芥川龍之介』の『杜子春』らしく。
どの版なのかは分からないけれど、どう分かりやすく改編されてるにしても、
小学校にあがる前の子が読むものではないような…。


見ていると、彼はハリーポッターもすいすいと読んでいました。
わあ。
うちの甥は同い年だけど、
ひらがなで書かれた自分の苗字を読むのにも5秒くらいかかるよ?


友達も友達のご主人も特に何を指導したわけでもないそうなんだけれど、
とにかく貪るように本を読むらしい。
前世か?前世で何かあったのか?


数日経ってからも、
ハリポタを読む5歳の男の子のいっしょけんめいな横顔が忘れられません。
しかし母にその話をしてみたところ、
「あら、あんたも5歳で漢字読んでたわよ」
とケロッと言われたのでした。
なに?!
「すごいコになるんじゃないかと思ってとにかく本ばっか与えてみたけど、
結局子どもなんてそんなもんよねぇ」
と、母はケラケラ。


そういえば、サンタさんからのプレゼントが
分厚い『アンの青春』と『女王クレオパトラ』と『マリーアントワネット』で、
幼心にとっても鼻白んだ年がありました。
(まあ、読んだけど…)


そして、そんなに早熟であったのにも関わらず、
今のわたしはまったく普通…
イヤ、普通以下…


でも、
幼い頃に読んだ本のことは今でも鮮明に憶えています。


指先を青紫に染めてみたり(安房直子『きつねの窓』)

きつねの窓 (ポプラポケット文庫 (051-1))

きつねの窓 (ポプラポケット文庫 (051-1))

空を見上げて「かげおくり」をしてみたり(あまんきみこ『ちいちゃんのかげおくり』)
ちいちゃんのかげおくり (あかね創作えほん 11)

ちいちゃんのかげおくり (あかね創作えほん 11)

コロボックルに話しかけてみたり(佐藤さとる『だれも知らない小さな国』)
だれも知らない小さな国―コロボックル物語 1  (講談社青い鳥文庫 18-1)

だれも知らない小さな国―コロボックル物語 1 (講談社青い鳥文庫 18-1)

現実と物語の境界線が今よりずっとずっとあいまいで、
そのぶん恐いことも多かったけど、
いちいちめいっぱい没頭した。
本を読むことは、今よりずっとずっと楽しかった。


読書は必ずしも必要なものではない、
本をたくさん読む人が教養に溢れていて思慮深いとは限らないし、
別に読みたくない人は読まなきゃいい、とわたしは思うのだけれど。
ただ、わたしにとっては、あの頃あの本を読んでいなければ、
今のわたしを形成している数ピースは確実に欠けていた、
という本が、たくさんあります。


あとは、
物語を読んでいれば寂しくなかった、
というのも読書の効力ではありました。
(今でもそういう面はありますが)


杜子春』の子はどんな子に育っていくのでしょうか。
これからたくさんの物語に出会える、あの子が少し、羨ましい。

幸福ということについて考える。

故・児玉清氏がたいへんな読書家であったというのは有名な話。
本にまつわる色々な逸話を遺されていますが、わたしの大好きなものにこんなエピソードがあります。


児玉氏は海外によく行かれていたのですが、ある時ロンドンに向かうときに、読みかけの翻訳小説を持って行こうかと迷われました。しかし大長編であるがゆえにかさばるので、最終的には荷物に入れずに飛行機に乗ったそうです。
しかし、機内で無性に物語の続きが気になり、うずうずしてきた氏。ロンドンに降り立つやいなや、書店に直行して英語版である原書を購入されました。
そうしてご満悦で読み進めたそうですが、その後、氏はベルリンに移動しなくてはならなかった。
その時も迷われたらしいのですが、とにかく分厚い本だった(※海外では長くても上下巻に分冊したりはしないので、長編であれば辞書のように束が厚い場合が多々あります)ので、読みかけの原書はロンドンに置いていったそうです。
しかし案の定、ベルリンに向かう道すがらで続きが気になってならなくなり…
結局、ベルリンに到着後も書店に飛び込み、今度はドイツ語版を購入して、ベルリンにて完読されたそうです。


手元に同じ本が3冊、3言語で。
世界を股にかけ英語もドイツ語も解した児玉氏ならではのエピソードではありますが、
「続きが読みたい」という渇望と情熱、そんな本に遭えたことの幸福感─すごく、すごくよく分かります。


そんな物語に出遭いたくて、今日もわたしは本を読む。


ちなみに、児玉氏を駆り立てた本とは一体どんな本だったのか?
ドラマ化もされた、こちらです。

原書の第1作目は983ページ!続編は1200ページ!
実は未読なので、そろそろ読んでみたいと思います。


先日読んだのは、こんな本。

消費税25%で世界一幸せな国デンマークの暮らし  角川SSC新書 (角川SSC新書)

消費税25%で世界一幸せな国デンマークの暮らし 角川SSC新書 (角川SSC新書)

親しい友人にデンマーク人の恋人ができたことがきっかけで、デンマークという国に関心を持っています。
福祉・高負担でも世界一幸福度が高いというデンマーク、その概要がざっくり分かる本です。


不況、不安定な政治、原発に代わる電力…
様々な問題を抱えた日本、今後進んでいくべき道はどこにあるのか?
国の規模や環境も違うのでそっくりそのまま真似をすることはできないと思いますが、学ぶことは多いと思います。ロールモデルにはなる。


しかし、幸福度調査では1位であるのに、デンマークでは自殺率も相当高い、ということには驚かされました。
金銭や健康に不安がないということと、心の充足ということとは、必ずしも比例しない…と、結論づけるには、「幸福度」という目に見えないものの調査方法にも疑問がないわけではないので、尚早とは思うけれど。
ワールド・バリューズ・サーベイの幸福度調査では、2位と3位がプエルトリコとコロンビアであるということにも、なんだか色々考えさせられます。


わたしができることなんて本当に小さくて、社会からしてみたら取るに足らないことばかりだけれど、だからって何も感じずに、目の前の娯楽や享楽に身を投じてばかりいられるはずもなく。
国や社会のことを考えること、意見を持つことはやめたくない、と、思います。

2011年4月17日─4月18日。

この6年、4月18日はわたしにとっては友人の命日だったけれど、ここ1年程で親しくなった人の誕生日でもあることを、先日知りました。
これからは命日に彼を偲ぶことではなく、誕生日をお祝いすることの方がおっきくなったりするのかな。


あれ以来「彼のぶんまで生きて」という言葉をよく耳にしたけれど、それには夭逝した人の遺族に対する決まり文句という印象しかなくって、正直ピンとくる言葉ではなかった。むしろ、そんな言葉を口にできる人をうっすら憎んでさえいたと思う。
でも、最近ふいに合点がいって、それを負うことができそうな気さえしてきました。


生きていくということは、こういうことなんだと思います。


それにしても。
17日に行った野外フェス「道との遭遇」@上野水上音楽堂の余韻が、今も冷めやりません。豪華なメンバーと豪華な選曲だった。


ビートニクスだった!


すごーく月並みだけど、「音楽ってすごいな」と改めて思いました。
それまで見えていた世界の色を、いとも簡単に塗り変えられる。
新しい色に。

マシュー=ヴォーン監督『キックアス』を観ました。

水曜日。いくつかの映画館で映画が1000円で観られる日。
なんだかどうしても気になる、どうしても観たい映画があって、会社帰りにシネセゾン渋谷まで走りました。間に合いました。

マシュー=ヴォーン監督『キックアス』。
監督としては目立った公開作品がないように思える方ですが、大好きなガイ=リッチーの『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』のプロデューサーなのです。そういえばあれも公開時にシネセゾンで観たなあ。

キック・アス DVD

キック・アス DVD

いわゆる「オタク」な高校生男子が一念発起し、覆面ヒーロー姿に扮して街のパトロールをはじめる。
ヒーローの姿をしてても中身はただのひ弱なオタクだから、当然各地で痛めつけられるんだけど、ある晩、気合いでギャングに打ち勝つ!
その動画がYouTubeにアップされ、彼は「キック・アス」という名のヒーローとして一躍有名人に。
その動画をきっかけに、いろいろな偶然と必然が重なって、彼は、極悪非道なマフィア×マフィアに恨みを抱えて特殊訓練を重ねたスーパー父娘の死闘に巻き込まれていく…。


思ってたより「血だらけ!」「いいい痛い!」という場面が多かったけど、総括すると、痛快な映画でした。
どこまでも強い父娘(お父さんはニコラス=ケイジ)、特にまだちっちゃい娘のアクションシーンの俊敏さ、凄絶さに口あきっぱなし!
全体的な起承転結としては勧善懲悪、オーソドックスで想定内なんだけど、「承」と「転」の奇天烈なシチュエーションにもあんぐり・・・オタク高校生が正義感をバネにあっと驚く成長を見せるところにも、スカッとします。


観にいってよかった。


ひとりで映画を観にいったのって、2年以上ぶりくらい。実は、読書量も格段に減っていました。
わたしはここしばらくで、独りの時間の使い方がずいぶんヘタクソになってしまっていたみたい。
別のことをたくさん学んでいたわけだけれど、なんだか自分の愛する文化的な諸々に対しては、とてもつまらない人間になっちゃっていたなあ、反省。
バランスって、難しい。


少しずつまた自分をとり戻して、今年は好きなことをいっぱいしたい。



エンドロールで流れるMIKAの曲、ふさわしくてすごくよかった。

Innocent When You Dream.

恵比寿ガーデンシネマが今月末に閉館するそうです。
ガーデンプレイスができたばっかりの頃はまだ高校生で、何を観に行ったかは忘れてしまったけど、初めて足を踏み入れたときはなんだかすごくオシャレな大人になった気がして、ドキドキしたのは憶えてる。
(結局いまだまったく「オシャレな大人」にはなってないわけですが・・・)
最近はめっきり行かなくなったけれど、なんだか寂しい。思い出はたくさんあります。


『ニル・バイ・マウス』を観た後、ガーデンプレイスをしばし無言で歩いたこと。
大好きなアルトマンの『ゴスフォード・パーク』に亡くなった友達を連れて行って、終映後に鼻息荒く感動を分かち合おうとしたら、先手をうって「まったく意味がわからなかった」と言われたこと。
台風の日に雨風に打たれながら『モーターサイクルダイアリーズ』を観に行って、すかすかの劇場でガエル・ガルシア・ベルナルにうっとりしたこと。
P.T.アンダーソンやキム=ギドクの何かもここで観たような・・・ たぶん他にももっとある。


最後の上映作品は、なんと『スモーク』!
クライマックスのトム=ウェイツでは泣いてしまいそうです。観にいきたいけど、激混みなんだろうな。


シネセゾン渋谷も、2月末に閉館。うちの業界もたいがいだけど、映画業界も厳しいのでしょう。


東京で長く遊んでいると、この類の寂しさにたくさん出会います。
でも、齢をとるとどうしてもこういう「喪失」の寂しさに心を動かされがちだけど、「昔はよかったな」なんて言ってばかりいる中年にはなりたくないので、もっともっと、フットワークを軽くしていきたいな。