How Far We Have Come

夜の浅草に散歩に出たら、浅草寺ほおずき市が催されていた。

暗がりのなか橙色に灯る提灯、走り抜ける子供たち、風鈴の音、行き交う浴衣姿の少女たち。

「あの小説、『夜市』みたいだね」と言われる。正に同じことを思っていて、みぞおちがきゅっとした。

すごく気が合うね、私たち運命的だねと、少女マンガどっぷりだった10代の頃なら浮足立っただろうけれど、今感じるのはそういうことではなくて、何だろう、すごく貴重だということ。ありがたや〜って拝むような気持ち。

同じものを見ているのに、度肝を抜かれるくらい自分とは違う受け止め方をする人がいるということ。

喉が擦り切れるくらい言葉を尽くしても、分かり合えないことがあるということ。

10代の頃知らなかったことを、私は今たくさん知っていて、そんなことを感じ入るときがくるなんていうことも、あんなに小説やマンガを読んでいても、あの頃の私は露とも思っていなかった。すごくいろいろなことを知っていると思っていた。

思えば遠くへきたもんだ。