起きると思うことは絶対に起きない
マイク・ミルズ監督『カモン カモン』を観た。
家族の事情から数日間を一緒に過ごすことになった伯父と甥の、プチ・ロードムービー的な物語。
全編白黒なのにとても温かい映像、こんなに美しいアメリカの街々は初めて観た。
人は人との関係性のなかで感じたこともない葛藤や確執を体験するけれど、それと同時に活力をもらうし、癒されるし、成長する。独りでは進めなかった道を選んで、前へ進むことができるようになる。
9歳のジェシーが語る。「起きると思うことは絶対に起きない/考えもしないようなことが起きる/だから先へ進むしかない」
日比谷のTOHOシネマズではパンフレットが完売していてがっかり。あきらめずに後日出先の日本橋でTOHOシネマズに立ち寄ると、まだ在庫があったのですかさず購入。ばんざい。映画の雰囲気に合った素敵な装丁だと思うと、たいてい大島依提亜さんのデザインである。
特に蒐集家というわけではないけれど、映画を観たら必ずパンフレットを買うようになって、途中パンフレットを買うために映画を観ていたかもしれないという偏執的な時期を経て、かれこれ四半世紀超え。実家のトランクルームに、衣装ケース3つ分のパンフレットが眠っている。
今となっては観た事実さえ忘れているような『マイ・ガール2』(1ではなくて2)とか、装丁が凝っているがゆえに保管方法に困るミニシアター系のパンフレットとか(90年代後半~00年代前半のパンフレットのデザインは凝りに凝っている。『奇人たちの晩餐会』の冊子にナイフとフォークがついていたり、アンナ・カリーナのリバイバルミュージカル映画はCDケースに収納されていたり、『えびボクサー』はえびの形だったり)、いつ・どのように処分するかを計画せねばと思う度に、いつも考えることを放棄してしまう分量にまで蓄積されてしまった。
今は映画を観たら必ず買う、というほど固執しているわけではなく、観た後に作られた背景を知りたくなったり、観た人のコメントを読みたくなったりした際に購入している。以前ほど映画を映画館で観る機会も減ったけれど、それでも年間4~5冊は順調に増えているから、いずれ真剣に在庫と向き合わねば...
今回『カモン カモン』のパンフレットが欲しかったのは、この作品の感想を誰かに言葉にしてほしかったから。山崎まどかさんのレビューがとてもよかった。
自分では言葉にできない感情や気持ち、でも確かにそこにあるものを、言葉に象ってもらえる安堵感と悦び。今回はパンフレットに載っているレビューだけれども、本をなぜ読むのかという理由の、ひとつでもある。