My Choice of Shoes is Ill

出版業界に長く勤めていながら、電子書籍を活用しはじめたのは業界を離れた後だった。

世の中には死ぬまでに読みきれないほどの本がまだまだ溢れていて、やっぱり全部リアル書籍の形態で購入していたらね、部屋がいくらあっても足りないよね、数年置きに選別して処分するのもなかなかに労力が要るよね。という、長年リアル書籍派を譲らなかった、自分に対する譲歩。

あれからかれこれ5年くらい?何かエンターテインメントの要素が強い文章を読みたいとか、コミックの続きが気になるけど蔵書として持っておきたいほどの思い入れはないとか、そのような際には電子書籍で購入するようにしている。

アート系のビジュアル本はもちろんリアル書籍がいい。文字データを持っていないFIX型形式のものはなるべく買わない(前にこれを買って読むのにえらい苦労した)。何度でも読みたい本はリアルで買う。

など、自分のなかで切り分けているけれど、たまに電子書籍で気軽に買ったのに、読み進めるうちに思いのほか感銘を受けることがあって、なんでリアル書籍で買わなかったんだろうととっても後悔することがある。

電子書籍の一番の欠点は、面白かった本を読んだときに、「ねえねえこれ面白かったよ」と親しい人に勧めることができないこと。いい本に出会った時の感動は、その興奮と共に人と分かち合いたいのです。

 

最近読んだ本

一人の人間の生きざまとか、半生とかを時系列で描いたものは、筆力がないと読者を引き込むことができない。その意味ではとても筆力のある著者だと思った。最後まで一気に読んだ。そして最後はある程度泣いた。

しかし、設定としては湊かなえの『Nのために』をとっても思い出した。あれはミステリの要素があったけれども、閉塞的な島社会で、互いに家族の問題を抱えているけれども逃れることができず、それがゆえに固い絆で結ばれる。行く先の運命も似ている部分がある。なんだろう、離島という環境での恋愛を物語の要素に据えると、似てくるんでしょうか。

 

 

電子で買って(これぞ文字データのないFIX型!)、リアル書籍も購入した本。

自分が見えていることだけを真実として捉えてはならない。そうしないことで拓けていく世界ののすばらしさ。アートが与えてくれる豊饒な体験、そこから拡がる可能性。

私がアートが好きで美術館や博物館に足を運んでいるからこそ琴線に触れた本なのか、まったくアートに興味関心がなくても心を動かされるのか。それは知りたいところ。