沖田修一監督『南極料理人』を観ました。

食べることが大好きです。
おいしい飲食店の噂をきけば東へ西へ、ヒマさえあれば友人たちを集めて食べるタベルたべる、食についての本や雑誌や映像も大好き、あちこちからレシピを集めてノートに切り貼り、それを眺めては悦に入る…もはや趣味です、趣味。


しかし、幼少期に日本の裏側の南国に送還されたショックからでしょうか、子供の頃は類まれなる偏食家でした。
家では嫌いな献立が食卓に並ぶたびにテーブルの下に引っ込んでは泣き、学校では給食が食べられずに居残りをさせられては泣き…あまり食べモノに執着した記憶もありません。
それが一変した契機は、お酒を嗜むようになったこと。それに伴い、友人たちと食卓を囲む機会が著しく増えたこと。
そのくらいの時期から瞬く間に雑食化し、あっという間に食い意地の張った女へと変貌を遂げました。
「いや〜気のおけない人たちとおいしいものを食べるって、サイコーだよねー!」ということに、気づいてしまったのでした。


南極料理人』に出てくる人たちも、おそろしく食いしんぼうです。
というか、食べることが最大の楽しみだから、食いしんぼうにならざるを得ないというか…。


南極の僻地・ふじ基地に派遣された、観測隊員たちの物語。
彼らが1年余りを過ごさねばならぬ場所は、周りは見渡す限りどこまでいっても雪原、ペンギンもいなければウイルスすら発生しない、地球の端っこ。8人きりの、孤立無援。時代が今より少し前、10数年ほど前の話なので、インターネット環境もととのっていず、テレビもまともに観られず、彼らの共通かつ最大の娯楽といえば、1日3度の食事!
堺雅人演じるシェフが、他の7人のために毎日せっせと調理します。
味噌汁に焼き魚、伊勢海老フライ、ほくほくのおにぎり、ラーメン、青椒肉絲、イベントの際にはローストビーフやケーキ、フレンチのコースまで。その一品一品に歓喜し、涙し、子供のようにはしゃぐ隊員たち見ていると、「食」というものの素晴らしさに感動します。


 「だって、おいしいものを食べると元気になるでしょ?」


というのは、『南極料理人』でのシェフのセリフですが、深〜く頷いてしまいました。


おいしいものを食べられるということの、このうえない幸福。
そして、独りではなく誰かと食卓を囲むことの、かけがえのない幸せ。
毎日当たり前に訪れる、でも決して当たり前だと過信してはいけない、「食事」というもののありがたみを喚起させられる映画でした。
原作も読んでみたいです。

面白南極料理人 (新潮文庫)

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