猫のホテル『けんか哀歌』を観ました。

舞台を観にいくのはかなりひさしぶりでした。ひょっとして去年の「表現・さわやか」以来?最近は舞台より他のことに時間とお金をかまけていたので、気づけば疎遠になっていました。


東京には刺激的なことがたくさんあります。
グルメ、ファッション、音楽、本、演劇、映画・映像、アート、建築物、それらにまつわるあらゆるイベント、人、会話…などなど。その気にさえなれば際限なく刺激を受け続け、いつまでも遊び続けることができます。


しかし最近は、ひっかかったもんはなんでも食っちゃえ!という、20代の頃の気概はだいぶなくなりました。資金と時間に限界があるから、という物理的な理由もありますが、雑食の時代を経て、自分の好むもの・好まないものを識別するスピードが速くなったからだと思います。
…というと聞こえはいいですが、視野が狭く、フットワークが重くなったのかなあとも思います。そして、もともと物事を意地悪な視点から見てしまう性格ではあったのですが、より一層クリティカルになってきている自覚もあります。
新しいものを吸収するスポンジのような力と、自分の価値観に固執しない、せめて他人の価値観を受容する心を忘れずに齢をとりたいのですが、なかなか難しいですね。


そんなこんなでひさびさの舞台、猫ホテ。やはり芝居は面白いなあと思わされました。
猫のホテルは、映画やテレビでは表現し難い、舞台でしか成立しない世界を見せてくれる劇団と思います。一貫して描かれるのは、あまり世間一般ではクローズアップされない人々の、おかしくも哀しい姿です。滑稽さと悲哀というのは表裏一体で、それを併せ持つのが人間なのだと。
今回は、終戦後に映画業界で起きた労働争議についての物語でした。座長・千葉雅子さんは、いつもいつもこんなマイナーな設定をよく思いつくなと感嘆します。
しかし毎回思うのは、ある一定の年齢以上しかわからないネタが満載だなということ。たぶんわたしくらいの齢でギリギリではないかと。20代前半には確実に無理な笑いです。

猫のホテルは、今年で劇団旗揚げから18年目だそうです。もう少しで20年、すごい!これからも楽しみです。