三崎亜紀『となり町戦争』を読む。

となり町戦争

となり町戦争

小説すばる新人賞受賞作。
ある日、主人公の住む町ととなり町との戦争がはじまる。しかし、町はちっとも変わらない。戦死者12名などと広報誌にも書かれているが、主人公はまったく実感がわかないほど、町の景色は変わらず、彼の毎日も変わらない。
しかしある日彼は役所から偵察業務従事者に任命され、役所の女性とともにとなり町に潜入することになるのである。そして…
という、一風変わった設定。しかしこれは評価されるべき作品である。
淡々とした語り口調の中から迫ってくる、そこはかとない不気味さ、不安。戦争とは、こんなふうに人の心に巣食うもので、今戦争が起きたらこんなふうになるのではないだろうか、という近未来への恐怖を行間であおる。これは才能である。