三木聡監督『転々』を観ました。

藤田宜永氏のものを原作にして三木監督が映画を撮る、というのはとても妙な取り合わせなカンジがしました。『イン・ザ・プール』の際には、原作からして三木監督の笑いとシンクロしそうな雰囲気があったので、はじめからしっくりきたのですが。

転々 プレミアム・エディション [DVD]

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しかしいつもながらに小ネタ満載で、クスクス笑いっぱなしでした。
簡単に言うと、ワケアリの三浦友和×オダギリジョーという男ふたり組が、井の頭公園をスタート地点として皇居まで、東京をてくてくと歩いていくというストーリーです。歩いていく道なりに、様々なドラマ…というか小ネタが、満載。


三浦友和というキャスティング(&あの髪型と服装)には、はじめて宣伝のポスターを見たときにぎょっとしましたが、見事でした。三木ワールドにどっぷり、小ネタ連発、しょっぱなから自分の靴下を脱いでオダジョーの口にねじこむなんて…いっぺんに好きな役者さんになってしまいました。脇のふせえり×岩松了×松重豊の掛け合いも面白く、チョイ出の岸部一徳もすてき。


全篇にわたって登場する東京の風景は独特な視点から撮られていて、「あ、ここ知ってる」「見たことある」というメジャーなスポットもあるのにもかかわらず、幼い頃からずっと見てきた自分の“東京”ではないような、まったくその通りであるような。新鮮なような、懐かしいような。ヘンなかんじです。彼らの辿った道をもう一度辿って、自分なり“東京”を見つけ出したくなります。


それにしても、三木監督の映画にあんなにキュンと切なくさせられるとは思っていませんでした。終盤と、終わり方がとても好きです。
家族とははじめからそこに在るものではなく、なるもの、なれるものではないか、と。
原作が非常に気になります。