荻上直子監督『めがね』を観ました。

小林聡美もたいまさこ市川実日子加瀬亮、そして光石研。加えて『かもめ食堂』の荻上監督。もう字面だけでときめいてしまい、そそくさと観にいきました。


主人公は、都会で人生に行き詰まりを感じ、ひとりで旅に出ます。人生のリセット(そのあたりの事情は一切描写されていませんが、そんな雰囲気)。そうして行き着いたのが、沖縄のどこかの島(与論島のよう)です。
海辺の宿に身を寄せるのですが、出会うのはみんなどこか的のはずれた、おかしな人たち。主人公は、はじめはそんな彼らに反発を感じ距離を置こうとするのですが、次第に島に流れるゆるやかな時間に溶けこみ、彼らとの生活に馴染み、伸びのびとした自分をとり戻していく─そんな物語です。


特に何か事件が起こるわけでもなく、登場人物がただ砂浜に座り海を眺めたり、風に吹かれたり、夕焼けを愛でたりする場面が大半で、全体的に眠くなる映画ではあります。実際、少しうとうとしてしまいました。しかし、それがこの映画の醍醐味なのだと思いました。
どこまでも拡がる青い海、人っ子ひとりいない砂浜、風の吹き抜けるさとうきび畑、波の音、虫の声…携帯も圏外になってしまう雑音のない世界に、自分もどっぷり浸かっている気分にさせられ、登場人物たちと共に景色をぼんやりと見て、のんびりとしてしまいます。そうすることを、この映画の中では「たそがれる」と言っていました。


  「行く先が見えなくなったら、なんとなく世界とピントが合わなくなったと感じたら、
             それがあなたのたそがれどき」(「めがね」パンフレットより)


ふいにひとり旅に出たくなりました。


出てくるご飯がとっても美味しそうで、『かもめ食堂』に引き続き、監督の食へこだわりが伝わってきました。
もたいまさこ率いる「メルシー体操」という奇妙な体操も必見です。
エンディングテーマは大貫妙子。ぴったり。

映画「めがね」オリジナル・サウンドトラック

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かもめ食堂 [DVD]

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