池澤夏樹『きみのためのバラ』を読みました。

きみのためのバラ

きみのためのバラ

検定試験を目前に控えているのにも関わらず、誘われればほいほいついていくので、勉強がまったく進んでいません。なので、せめて本は読まずにおこうと思いましたが、池澤夏樹の12年ぶりの短篇集とあり、ついガマンができず読みきってしまいました。
こちらもまた、ひと言でいうなれば受容の物語です。ミュンヘンヘルシンキ、メキシコ、バリ、沖縄…世界各地で人が人が出会い、別れます。すべて束の間のめぐり逢いでありながら、なりふり構わず追いすがりたいほど、貴重な出会いなのです。しかし、登場人物は皆、運命に抗わず出会いを受け容れ、別れを受け容れます。そのサマの、なんと切なく美しいことか。

若い頃というのは、ベクトルをすっとんきょうな方向へ向け、おかしなものを求め、すがり、追いかけるものです。そのせいで、本当に自分にとって大切な邂逅というものを何度見落とし、いくつよけいな荷物を背負ってきたことでしょう。まあ、逃したタイミングはそもそもタイミングではなかった、と言ってしまえばそれまでですが。

運命に抗い続ける生き方は好きですが、むしろ運命に耳を澄まし受け容れるという生き方のほうが、最近は難しいように感じます。

それにしても、試験勉強…