疾走する愛みたいに

電車内で向かいに座った女の子の、たたずまいがとても素敵だった。

真っ黒な潔いショートカットに、キリっとした眼差し。深い赤のリップ以外はアクセサリーもネイルもしていない。こなれたトレンチコートにブラウンのホースビットローファーを素足に履いて、ビニール素材の白い大きなトートバッグを膝に載せ、まっすぐと前を見ていた。

汚れた血』の時のジュリエット・ビノシュみたい。

スマホ越しに彼女を盗み見ながら、彼女の持っているバッグのロゴをググッて探し出して、彼女が電車を降りる前に、そのバッグをポチッと買ってしまった。

私が同じバッグを持ってみても、今のところはそんなに素敵じゃないけど、久しぶりにそわそわワクワクするような買い物をした気がする。

 

他のいい大人は果たしてこういうことをするのだろうかとか、自分の悪い意味での子どもっぽさに最近とみに疑問を抱くことが多いけれど、「元気?」ときくと、「相変わらずだよ」と毎年答えてくれる、しばらく会わないあの人にはほんのりホッとさせられるから、まあいいのかな、とも思う。

私ほど変わらないわけではないと思うけれどもね。