汚れちまった悲しみに。

わたしの勤めている会社は虫の息ですが、もうちょっと息が続きそうな親会社には、新入社員が入りました。


「○○社のために全力で頑張ります!」
「入社できて光栄です!」
「読者にすばらしい本を届けたいです!」


むず痒くなるような彼らの姿はとっても眩しく、正視できませんでした。
一体自分はどこで間違えたのだろうと訝しく我が道を振り返りますが、そもそも、4月1日に朝礼の壇上であんな挨拶を謳えるような人生であったことは一度もなかったと、自嘲気味に、同時に誇らしく思い返す、そんな突風吹く春の日です。


まだまだ何でもできそうな。でも、もう何にもできないような。
それはきっと、どっちも正しい。


新年度早々、すこしアンニュイな気持ちになってしまったので、
仕事にかこつけて、会社のお金で、業務時間内に、観たかったアニメを観に行きました。


片渕須直監督『マイマイ新子と千年の魔法』。原作は高樹のぶ子さんの小説です。

マイマイ新子 (新潮文庫)

マイマイ新子 (新潮文庫)

去年新宿ピカデリー〜ラピュタ阿佐ヶ谷で公開されたときには、混雑していて観に行かれませんでしたが、クチコミで人気が火につき、異例のロングランとなったそうで、現在渋谷で公開中、その後吉祥寺でも上映されるようです。


一面拡がる麦畑、遠くに見える山々、夕陽ふりそそぐ畦道、季節を告げる川のせせらぎ…昭和30年代の山口県の田舎の風景が、アニメーション制作会社・マッドハウスによりとっても美しく描かれていて、それを見ているだけで心が洗われます。キャラクターデザインはだいぶジブリっぽいですが、田舎町を生き生き飛び回る子どもたちがかわいい。
子どもながらのファンタジックな想像にワクワクし、哀しい現実に胸を傷めるさまに涙を誘われ、それを乗り越えていくしなやかさに希望をもらい…
誰もが自分の子ども時代を懐かしく切なく思いだす、すばらしい作品だと思いました。
観に行ってよかった。


転校が多く都会育ちだったわたしには、残念ながら思いを馳せる田舎はありませんが、それでもいくつかの思い出が胸をよぎりました。


わたしがドイツに転校する数日前、みんなで自転車で走り回った後、夕暮れの縁側で、おばあちゃんが焼いたトウモロコシをご馳走してくれたシオバラくん。
サッカーボールが床にこすれる音を耳にして、あわてた様子で、


「外国の人はそういうのマナー違反っていって怒るらしいぞ…向こうでは気をつけろ」


と小声でアドバイスをくれたこと、20年経った今でも忘れません。元気にしているのかしら。


でも、あれはわたしのオナラじゃありませんからー。