沼田まほかる『九月が永遠に続けば』を読みました。

9月だけに。
Earth, Wind & Fireの歌にかの有名な『September』という曲があります。大好きです。この時期にクラブや飲食店やラジオでよく流れていますね。
9月は意外にも何かしら題材にしたくなる月なのでしょうか。4月や8月ならなんとなく分かるのですが、なぜ9月?海外では学校の年度はじめだからでしょうかね。わたしにとってのそんな月は、狂った花が咲く3月です。

九月が永遠に続けば (新潮文庫)

九月が永遠に続けば (新潮文庫)

2004年に、今はなきホラーサスペンス大賞を受賞した作品です。
ホラーサスペンス大賞、第1回を受賞した黒武洋『そして粛清の扉を』が、内容を憶えていないながらも面白いと思った覚えがあります。五十嵐貴久道尾秀介など、パンチのある作家を発掘している骨太な賞でした。ただわたしがホラー&サスペンス好きなので、自分好みというだけかもしれませんが。


主人公である中年女性の高校生の一人息子が失踪したことを発端に、彼女の周囲で次々と不幸な出来事が起こりはじめます。愛人、別れた夫、後妻、その娘…主人公が関係する人々が一線でつながりはじめ、人々の抱える忌まわしい過去が徐々に明らかになり…という物語です。
この「過去」が、本当に厭わしい、そして恐ろしい。その、本を閉じたくなるほどグロテスクな描写に、著者の筆力を見せつけられ、ぞくぞくし、惹きつけられます。短時間で一気に読みました。著者にとってはデビュー作ですが、中堅の作家ですら誰しもが書ける文章ではないと思います。すごい。
ホラー、というので幽霊やら呪いやらが出てくるんだろうと思ってしまうかもしれませんが、一切出てこないのですね。人間の内面の闇のみを描いてこんなに戦慄させられるとは。まあ、この世で「人間」が最も怖い、と言ってしまえばそれまでなのですが。著者の人間と人間関係を見る眼力と、その表現力に脱帽。