最近読んだ本。

友だちが日記に読書のことを書いていたので、触発されました。
彼女がすこし薄暗い部屋で映画の感想をせこせこと書き留めてたのを、リビング(とカタカナでいえるような造りではありませんでしたが)の襖からのぞき見たことを、とても覚えてます。映画が好きなんだなあと思ってた。あれからもう7年とか、8年とか?経つの?
わたしは相変わらず、ちょこちょこ細々と本を読んでいるけれど、あの頃と比べたら、ずいぶん手持ちの本は減りました。いい本に出遭ったら、全力で「これいいんだよー読んでー」と言ってまわりたくて仕方ない、押し売り気質はそのまんま。


■ひさしぶりに小説で泣いた─窪美澄ふがいない僕は空を見た

ふがいない僕は空を見た

ふがいない僕は空を見た

新潮社が主催している「女による女のためのR−18文学賞」という小説賞があり、その一昨年度の大賞受賞作『ミクマリ』を収録した短篇集です。
豊島ミホ宮木あや子など、筆力があり好みの女性作家を排出している賞なので、あの賞の受賞作、ときくと読みたくなります。「女性のためのエロ」がテーマの賞なので、濃い目の性描写が苦手な女性や男性には向かない…のかも?


『ミクマリ』はひとことで言うと、16歳の高校生男子とコスプレ好き主婦との、性愛の物語…と書くと、嫌悪感をもよおしてしまう人もいると思います。もしかしたら、『ミクマリ』だけを読むのだったら、人によってはその不快感を拭えないかもしれない。しかし、すべての短篇を読みきってから判断したほうがいい。
この本は、高校生男子周辺の、それぞれの事情を抱えた人物たちが入れ替わり立ちかわり主人公となるオムニバス形式をとっており、次の篇、次の篇、と読み進めるにつれ、物語が生命力を増し、くっきりとたちあがってくるのをひしひしと感じてきます。彼の母親が主人公である最後の『花粉・受粉』は、特に胸に迫ってくる。これまでの物語を想い、自然と涙が出ます。


コスプレをはじめとして、異常性愛、引きこもり、格差…と現代のキーワードてんこ盛りであり、母親が助産師であるという設定もなかなかダイレクトなメッセージではあるのですが、ステレオタイプとは決して言えない、リアルな凄味がこの小説にはある。ただ今の時代を批判しているのでも、歪んだ愛の形を描いているのでもない。生と性の素晴らしさを力強く描いた、珠玉の作品です。


■愛の本質が見えない─白石一文『ほかならぬ人へ』

ほかならぬ人へ

ほかならぬ人へ

私という運命について』には感動しましたが、『僕のなかの壊れていない部分』や『一瞬の光』は良さがあまり分からなかったし、『不自由な心』も読み流してしまって…と、いまだ世間の高評価に追いつけていない作家の一人です。でも、「超つまんなーい」というものでもないし、なんだか気になって著書を概ね読んでしまったということは、何かあるのか?…と思ってまた読むのが、わたしのなかの白石一文スパイラル。
と、思っていたら、直木賞を獲った!それがこの『ほかならぬ人へ』。
“愛の本質に挑む純粋な恋愛小説” “「男女間の恋愛」を徹底して突き詰めた傑作の誕生”と帯にありました。す、すっごいまっすぐな煽り方だなあ。


…しかし、やっぱりふつうな気がする。
要所要所にいいフレーズはあるんだけど、それって『笑撃!ワンフレーズ』のようなもので、物語としてどうかというと…。
男の人や、違う年齢層向けなんだろうか。うーむ。
そうしてまた、わたしの白石スパイラルは続く。


■世界の終わりとはじまりと、新世界─諌山創『進撃の巨人』、石川優吾『スプライト』
最近は少女マンガばかりでしたが、ひさびさに面白い少年&青年マンガに出遭いました。


進撃の巨人(1) (少年マガジンKC)

進撃の巨人(1) (少年マガジンKC)

巨人が蔓延る世界。その巨人たちが捕食するのは、なんと人間!生き残った人間たちは、巨人から逃れるために高い壁を築いてそのなかで平和に暮らしていたのだが、ある日、常識外の超大型巨人が現れ、人間と巨人との死闘がはじまる─
この設定だけで、相当新しいし、面白いです。
まだ23歳の新人作家ということで、絵はなかなか粗いですが、それを引いても尚、先が気になってならない物語。巨人の顔が、なんともコワイ。岩明均の『寄生獣』で寄生される人間の、虚ろな表情に似てます。


スプライト 1 スプライト (ビッグコミックス)

スプライト 1 スプライト (ビッグコミックス)

女子高生が友人と共にタワーマンションの上階に住む叔父を訪ねた日、彼女たちは大きな地震と共に黒い水に襲われる。水の引いたあと眼下に現れたのは、荒廃した世界だった…。
ドラゴンヘッド』を彷彿とさせる設定と世界観。でも、読み進めていくと、いろいろどうして、けっこう違います。水がなくなった後に彼女たちが降り立った世界が、2059年の世界だったり…ちょっとSF?3巻にして謎だらけで、こちらも先がきになってならない。
シリアスでハードな物語ながら、ユーモアがちりばめられてるのにホッとします。


なんだか最近ごぶさただったタイプの物語にたて続けに出遭えて、うれしい。
読書の秋、ワクワクします。