そして恒川光太郎といえば、『夜市』です。

夜市

夜市

デビュー作でありホラー小説大賞を受賞、直木賞の候補にもなった『夜市』。
現の者ではない物の怪たちが催す夜の市に大学生が友人に誘われて訪れる、という短編なのですが、冒頭2行で一気に引きこまれました。おどろおどろしいのに美しい。いつのまにか泣いていました。具体的に何が、ということは表現できないのですが、静かで穏やかな語り口の底に、全篇にわたり切なさと哀しみをたたえていて、わけもなく涙が溢れてくるのです。鮮烈な作品でした。