堤幸彦監督『自虐の詩』を観ました。

自虐の詩 (上) (竹書房文庫ギャグ・ザ・ベスト)

自虐の詩 (上) (竹書房文庫ギャグ・ザ・ベスト)

働かない、妻がパートで稼いだなけなしのお給料は使い込む、気に入らないことがあると卓袱台を引っくり返す、ケンカっぱやい、無口で何を考えているか分からない、酒飲み、ぐうたら…というとんでもない亭主と、彼に献身的に尽くす妻の物語です。
文字にすると結構どん底な生活のお話、かつ、2時間近くの長丁場で中だるみもあるのですが、全編にわたった監督特有のギャグに大いに笑わされ、根底にある深い夫婦愛に泣かされます。
そう、夫婦愛です。はじめは「一体なんでこんな男と彼女は別れないんだろう?」と思ってしまうのですが、物語が進むと妻の少女時代や亭主との出逢いが徐々に明らかになっていき、背景にある純愛とその理由に気づかされ、ほろりとさせられるのです。
どんな人生にも価値がある、というセリフが身に染みます。言い尽くされていることですが、ありきたりな生活の中にこそ幸せがあるのかもしれない、ということを、できるだけ忘れないでいたい、と改めて思いました。煩悩にまみれた都会の生活の渦中にいると、なかなか難しいことですが。
安藤裕子の主題歌もじわじわきます。彼女はとてもいい声をしていると思います。
海原の月

海原の月