本棚妄想。

私の部屋には本棚がありません。
幼い頃から長年、本はすべて積んでおく、あるいはたてかけておくという杜撰なスタイルをとっています。かといって蔵書は決して少なくはないので、歴代どの部屋もおしゃれなインテリアとは無縁、たいへん雑多なことになっています。
しかしもちろん本は大切な財産なので、本棚設置はわたしの積年の夢であります。ただそのときどきの部屋の形や広さがまったく本棚設置に適していないため、理想の本棚購入がずっと阻まれているのです。
理想の本棚、というのは床から天井まで届く木製の本棚。図書館にあるようなものですね。重ねられることなく、すべての本の背が一望できるのがいいです。スペース的に難しいかもしれないので、スライド式本棚でも仕方ないかな、とにかく前の列をどけないと後ろの列の本が取り出せないというのはイヤ。
友人と同居していた頃には納戸に古道具屋で買った本棚を3つ並べることができて、ほくほくでした。


ところで、誰かの家に遊びに行った際には、本棚のラインナップが気になりませんか。
江古田ちゃんのような気持ちになったことありませんか。↓
http://fortune.yahoo.co.jp/fortune/psychology/ekoda/shindan?ty=r&pg=5&q=ynnyy&bid=20070821&x=135&y=5
わたしは江古田ちゃんのようなイタイ目にあったことはありませんが、その人の人となりにしては意外な本を所有しているのを発見し、以降その人の見方が少し変わることはよくあります。
よく憶えているのは、爽やかスポーツマンの家に遊びに行ったときのこと。植草甚一フィッツジェラルドのコレクションが1畳分くらいどーんと並べられていて、てっきり頭が筋肉だと思っていたので(←偏見)、びっくりしました。


臨死!!江古田ちゃん(2) (アフタヌーンKC)

臨死!!江古田ちゃん(2) (アフタヌーンKC)

江古田ちゃん、楽しめます。こういう女子の独りごちマンガは高野文子るきさん』〜魚喃キリコ『ハルチン』の流れかと思いますが、時代順にどんどん赤裸々かつ自虐的になっていくように思います。
るきさん (ちくま文庫)

るきさん (ちくま文庫)

ハルチン (Mag comics)

ハルチン (Mag comics)

先日おじゃましたお部屋の本棚は、首尾一貫されていました。隅から隅まで一分の隙もなく専門書、あるいはその関連本。その徹底ぶりがむしろ疑わしいくらい、なんて思ってしまうほど。
そのなかに前に読みたいと思っていた、けれど自分で買うような本でもないと思っていた本を見つけました。中公新書のロングセラー、『ゾウの時間 ネズミの時間』です。

ゾウの時間 ネズミの時間―サイズの生物学 (中公新書)

ゾウの時間 ネズミの時間―サイズの生物学 (中公新書)

とっても簡単に言うと、動物によって流れる時間の速さは違う、ということを立証している本です。タイトルからすると哲学的な感じがしますが、副題は『サイズの生物学』、著者は有名な生物学の教授、ということで科学的根拠にのっとった内容となっています。
しかしなんとも、このタイトルがすばらしい。タイトル=副題であったら、興味ももたなかった読者が6割くらいいるんじゃないかしら。そして、時間というものは普遍的で万物に共通の尺度だと、なんの疑いももたないのが普通だと思いますが、それがこの本を読み進めるごとに理論的に覆されていくさまは、一種ロマンチックでさえあります。


新しい誰かと知り合うことによって自分の本棚にまたひとつ本が増え、見たこともない世界がまた拡がるということ、人生のひとつの醍醐味と思います。