よしながふみ『愛すべき娘たち』を読みました。

愛すべき娘たち (Jets comics)

愛すべき娘たち (Jets comics)

よしながふみというとボーイズ・ラブ的な印象が強く手を出せずにいたのですが、雑誌によい書評が出ていたので、気になり手にとりました。胸にずっしりくるよい作品でした。同じコミックでいうならば、近藤ようこのような読後感です。人に手放しでお勧めするようなものではないし、大好きだと豪語はできないけれど、という。
この5篇の作品には、母と娘、男と女、女と女の、家族愛とも恋愛とも友情とも括れない、「愛情」の形が綴られています。ある程度の齢になった人であれば、どこかしら身につまされる部分があるのではないでしょうか。人生は一筋縄ではいかない、ということ。でもその様々な形を受け容れて、抱えて、生きていくということ。

他人に対する気持ちというのは「好き」「好きではない」「嫌い」と表せば簡単だし、実際そこに終始するものなのかもしれず、シンプルな方が人生はうまく転がるのでしょう。しかし、誰かのことを思い関わるということは、ある種の人間、ある種の関係性においては、ときには本人にさえ分からないほど複雑で、どんなに言葉を尽くしても説明できないものと思います。
「分かってるのと許せるのと愛せるのとはみんな違うよ」というセリフが終盤に出てきますが、そこに物語の核心が集約されていると思いました。