いとしいものを殺さなければならない:西川美和監督『ゆれる』を観ました。

ゆれる [DVD]

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試写会へ行ってきました。会社をさぼってまで観たかったのは、西川美和監督の『ゆれる』。
7月公開なので詳細はアレですが、面白い、というかある分野の金字塔になり得る作品だと思います。よかったです。
香川アンフェア照之は『鬼が来た!』あたりから、顔は河童みたいだけどなんとも深みと凄みのある俳優さんだなと思ってましたが、正直オダギリジョーがあんな含蓄のある表情を魅せるとは思いもよらなかったです。『スクラップヘブン』も『メゾン・ド・ヒミコ』もよい映画でしたが、実は、ジョーってば存在感ありつつお芝居はややキムタク寄り?とか思ってまして、自分の審美眼のなさ、恥ずかしいです、ごめんなさい。後半特に、突き動かされるものを感じました。カッコイイだけじゃないんだね、ジョー!

人間と人間とのつながりの不確かさ、その果てにある絶望と可能性。監督さんは『蛇イチゴ』の方で3つ年上なだけ、この齢で、あの人間の奥底に蠢くなんとも言えぬ厭らしさや畏れや気高さをあれだけ描ける表現力は空恐ろしいと思いました。言われれば感じられるくらいの齢ではあるけれど、それを見つけ出し、手を伸ばしてえぐりとり、他人に伝えられる、というのはやはり才能かもしれません。三浦しをんの『私が語りはじめた彼は』を読んだとき以来の衝撃でした。

蓄積の20代を経て放出の30代、同世代の素晴らしい人がこれからどんどん世に出てきます。