長嶋有『泣かない女はいない』を読む。

泣かない女はいない

泣かない女はいない

好きな文体である。
しかしわたしは吉田修一といいこの人といい、おおまかに言ってこういうタイプの作家の描く女性像がどうしても近しく感じられない。
みんな麻生久美子のようであるというか。抑揚がなく、地面から1センチくらい浮遊しているかのような。ハーフトーンの。彼らの女性に対する視点はとても好きだけれども、男性の描く女性だな〜と思ってしまう。


しかし、この小説は好きです。ディテールが現実的で、普通ならば捉えられない3ミリくらいの感情の推移が、見事に表現されている。
表題は何のことなのかと思ったら、ボブ=マーリーの"NO WOMAN, NO CRY"をそのように訳すと思っていた、というエピソードがありました。正しくはまあ、"泣くなよ"というような意味だと思いますが。たしかにジャマイカ英語はちょっとイカレているので、いろいろな解釈ができると思います。
それにしても、この曲が流れただけでかえって泣けてしまう女子は多かろう。泣きそうな人に"泣くなよ"というのは逆効果なんですよね。しかし、泣きたい場合が多いわけだから、一回転して、やはし言ってあげた方がいいんですよね。