ミシェル=ゴンドリー監督『エターナル・サンシャイン』を観る。

正直レビューや予告編からもっとロマンチックなお話を想像していたんだけれども、よくよく考えると脚本はチャーリー=カウフマン、一筋縄で済ませられるはずもあるまい。カウフマン、ナイーブで歪んだ人なんだろうなあということが、いつもひしひしと伝わってくる。嫌いじゃない。


恋の終焉を迎えた恋人同士が、記憶を消去してくれるという会社に依頼してお互いの記憶を抹消してもらうお話である。
抹消の過程がとってもファンタジックである。フラッシュバックする彼女との数々の美しい思い出、消したいと思っていた記憶のはずなのに、彼は消去の経過において失くしたくないと思いはじめ、迫りくるdeleteキーの魔の手から逃げ惑うのである。
可笑しくて、とっても切ない映像が、万華鏡のようにくるくると廻る。"記憶"という、人間の内の曖昧で乱雑なブラックホールが、ミシェル=ゴンドリーのアナログな技術によって見事に映像化されている。
やっぱり、ゴンドリーラブ!
そう、恋の記憶とはこんなものだ。時を経ると、忘れたかった思い出も、美しく輝く。


ミシェル=ゴンドリーが、パンフレット内のインタビューで語る。

「…ノスタルジアとは幸福感と絶望感が混ざったものだというんだ。過ぎ去ったことは、もう二度と起こらないから哀しい。だからこそ、思い出すと幸せな気持ちになれるんだよ」

…言いえて妙。


ジム=キャリー×ケイト=ウィンスレットという組み合わせが公開前からかなり訝しかったけれども、大成功である。
特にジム=キャリー!オーバーなコミカル演技のイメージしかなかったけれども、静かで憂いをおびた演技もできる俳優さんだったんですね、冒頭のモノローグからバッサリやられました。不器用でダサイ男そのもの、カッコイイじゃないですか!
ゴンドリーのPV集で観たゴンドリー本人の屈折した感じに、なぜかとても似ていました。