絲山秋子『袋小路の男』完読。

袋小路の男

袋小路の男

平易な文体であるが、いつのまにか引き込まれてしまう表現の妙。底力のある作家さんであると思う。
女性の主観である表題作と、その歳月を俯瞰的に、やや男の視点から見た『小田切孝の言い分』。
主観と客観、幻想と現実、ダメな男と都合のいい女。
異性とそれなりの交錯を経たことのある者ならば、誰しもが感じる解離性ではないか。
そう、これはどこにでもあることだ。男と女はどこまでもわかりあうことができない。お互いに相手を見透かしてると思い込み、浅はかに折り合いをつけるしかないのだ。それはなんと哀しく切ないことであるか。しかし、互いに無くしては生きられない。
それが絶望であり、反面、生きる希望ともなるのだ。